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スキップフロアの家は何となくモダンでおしゃれな感じだが、階段が多くなり面 積的にも余裕がなくなるのではないかと思う人が多いかもかもしれませんが、上手に設計すると以外に面 積的にも有効に利用することが出来るようになります。 確認申請上は2階建ての住宅でも、4階や5階の家のような雰囲気のある、豊かな空間を生み出すことが出来るのがスキップ住宅の面 白さです。
しかし、スキップフロア住宅の設計では、気をつける点が幾つかあります。ひとつは階段ですが、階段室のような閉ざされた空間にすると、家全体の広さが損なわれて、折角のスキップフロアの良さがなくなってしまいます。1階から2階(実際には1.5階)への移動空間としての階段は、なるべくオープンにしてリビングやダイニングなどのパブリックスペースを広く見えるように工夫する方が良いでしょう。これらの空間が同一レベルで繋がっている場合より、レベルが変わることで、来客などのフォーマルな空間としてのリビングと、団欒スペースとしてのダイニング空間の視線を微妙にズラスことが可能になり、台所が丸見えにならずに済むように出来ますし、食事の時間とくつろぎの時間を自然に区切れるようにもなります。

スキップフロア住宅の設計で一番悩むのがトイレの位 置です。1階のパブリックゾーンに設けるトイレと2階(又は2.5階あたり)のプライベートゾーンに付属するトイレ(ウォッシングルーム)の位 置が居室の同一レベルとすることが出来ないケースが起こるためです。つまり普通 の2階建てなら、2つのトイレは必ず同じ階のレベルにありますが、スキップの場合は4層や5層になりますので、2つのトイレは必ずしも居室の同一レベルにあるとは限らないのです。お年寄りや、体の不自由な方がいる場合には、床のレベルをインフラ空間(トイレなど)と同じ レベルになるような部屋にしてあげるようにしないと夜のトイレなどに支障が生じてしまいます。

スキップフロアのプランニングを絶妙に行うと、それぞれのレベルの中間的な位 置に多機能な収納を設けたり、微妙なプライバシーを確保する繋がり(視線のレベル差を活用することになります)や、コミュニケーションが取れるバッファーゾーンを創り出すことが出来て、楽しい空間が生まれるようになります。稀には設計者自身が気がつかないで建築中に用途が広がるような空間が出来てしまうようなことすらあります。
こうした楽しい生活空間を演出することのできるスキップフロア住宅ですが、これまでは傾斜地などの特殊な敷地に対応するために建てられるケースが多く、構造的にも比較的強度が強いとされるRCや鉄骨造で建てられることが多かったようです。スキップフロア構造の場合、梁が互い違いに柱に掛かるために、大きなせん断力が柱に生じます。柱にホゾ穴を設ける一般 の軸組み構造の仕口接合やボルト穴のある接合金物などでは、柱の断面 欠損が問題になり、耐力上問題が出る危険が指摘されていました。
高床式構法では、この断面 欠損がなく、しかも柱の太さが4寸(120角)なので、梁からのせん断力にも十分に耐えることが出来るのです。優れた構造性能と耐久性を持った高床式構法を利用して、変化に富んだ多層構造の家を実現してみては如何でしょうか。